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住宅ローンの見えにくい負担 修繕費と金利の上昇

・ 文:ファイナンシャルプランナー 菊池

前回の記事では、社会保険料の引上げなどで手取りが目減りしているため、住宅ローンの返済は「手取りの25%以下」を目安にしましょう、とお伝えしました。

前回の記事:住宅ローン返済比率は「手取りの25%」が安全な理由

ただ、家を持つための負担は、毎月の返済額だけではありません。

今回は、持ち家ならではの「見えにくい住居費」と、住宅ローン金利の上昇について、2009年と今を比べながら数字で見ていきます。

見えにくい住居費:修繕・設備交換の費用も上がっている

家を持つと、住宅ローンの返済とは別に、外壁や屋根の塗装、給湯器・キッチン・お風呂などの設備交換の費用がかかります。

賃貸なら大家さんが負担する費用なので、持ち家ならではの「見えにくい住居費」です。

この費用のもとになる工事費が、大きく上がっています。

2009年 2025年 倍率
平均給与 406万円 487万円 約1.2倍
住宅の工事費(建設工事費デフレーター) 94.0 131.4 約1.4倍
マンション修繕積立金の目安(国のガイドライン) 218円/㎡ 335円/㎡ 約1.5倍

マンションの場合、70㎡で計算すると、修繕積立金の目安は月約1.5万円→約2.3万円。

30年間で約290万円の差になります。

戸建ての場合は、比べられる公的な資料がほとんどありません。

そこで、たとえば2009年に年20万円(30年で600万円)の積立が目安だった家で考えると、工事費の上昇にあわせて年約28万円、30年で約240万円多く必要になる計算です。

工事費は、人手不足による人件費の上昇と、資材の値上がりで、今後も上がっていくと考えられます。

2009年と比べると、すでに数十万円から数百万円単位の差が生まれており、積み立てて備える前提で住居費を考える必要があります。

最近よくあるのが、お住まいのマンションの大規模修繕工事で、長期修繕計画で想定していたよりも工事費が高額になって修繕積立金が不足し、一時金が徴収されたうえ、その後の修繕積立金も大幅に値上がりした、というケースです。

わたしが不動産会社に勤めていたときに取り扱った案件の中には、修繕積立金と一時金の徴収だけでは賄いきれず、さらに借入をしていたマンションの管理組合がありました。

返済原資には区分所有者から毎月徴収する修繕積立金を充てており、その修繕積立金は大規模修繕後に大幅に増額されていました。

このようなマンションは、中古として売買する際にも売却価格に大きく影響し、資産価値を下げてしまいます。

金利の上昇で、返済額も増えていく

もう一つの負担増が、住宅ローン金利の上昇です。

日本銀行の利上げにともない、変動金利のもとになる基準金利は、2016年の2.475%から、2026年10月には3.375%(都市銀行の中央値)に上がりました。

固定金利も、フラット35の最も多い金利が2016年10月の1.06%から、2026年10月には3.83%になっています。

フラット35の金利の推移は、こちらの記事でグラフにまとめています。
フラット35の金利推移グラフ

3,500万円・35年で借りた場合で試算すると、次のようになります。

ケース 毎月の返済額 年間の増加額
2016年に変動金利0.625%で借りた人(基準金利の上昇分だけ金利が上がった場合) 約9.3万円 → 約10.3万円 約13万円
2016年に10年固定1.0%で借りた人(固定期間が終わり、変動へ) 約9.9万円 → 約11.1万円 約14万円
今、変動金利1.195%で借りる人(金利が1%上がった場合) 約10.2万円 → 約11.9万円 約21万円

※2016年の金利や、固定期間が終わったあとの優遇幅は、例として置いた数字です。

住宅ローンを借りる人の多くは変動金利を選んでいます(住宅金融支援機構の2026年1月調査では、利用者の75.0%が変動型)。

また、2016年ごろに10年固定で借りた人は、ちょうど今、固定期間が終わり始めています。

固定期間が終わったときは返済額がすぐに変わることが多く、注意が必要です。

変動金利で借りている人も、金利の上昇にあわせて利息の負担が増えていきます。

返済額が急に上がらないしくみ(5年ルール・125%ルール)がある銀行でも、その分の利息は後に残ります。

家を買えるのは「かなり余裕のある人」になりつつある

物件の価格も、給与を大きく上回るペースで上がっています。

近畿の不動産価格指数(2009年→2025年)では、戸建て住宅は約1.24倍、マンションは約2.2倍です。

価格が上がった分、今から家を買う人の多くは、金利の低い変動金利を選ばなければ予算に届きません。

しかし、変動金利は上昇傾向です。

これから買う人は、金利の上昇による負担増が避けられないことを前提にしておく必要があります。

平均年収(487万円)の人が「手取りの25%」(月約7.9万円)に返済を収める場合、借りられる額の目安は次のとおりです(35年返済)。

条件 借入額の目安
今の変動金利(1.195%)のまま 約2,710万円
金利が1%上がっても手取り25%に収まる額 約2,320万円
さらに戸建ての修繕費の積立(月約2.3万円)も住居費に含める場合 約1,910万円

上の3,500万円の例では、今の金利でも毎月の返済が手取りの約32%になります。

物件価格の上昇、工事費の上昇、金利の上昇がそろった今、無理なく家を買えるのは、かなり余裕のある人に限られつつある、というのがわたしの実感です。

最近のご相談者様には、住宅ローンの選択肢があまり多くありません。

フラット35などの全期間固定を選ぶと、住宅ローンの返済額が大きくなりすぎてしまうからです。

不動産会社も銀行も、当然のように変動金利を勧めてきます。

しかし、以前別の記事でも書きましたが、金利上昇期に住宅ローンを借りるのであれば、固定金利を選ぶのが鉄則です。

変動金利では、当初の返済計画が金利上昇によって早々に崩れてしまい、家計のやりくりに困ることになります。

2026年現在の状況から判断すると、今後さらに金利が上昇する可能性が高いです。

本来、ここで住宅ローンを借りるなら一番の選択肢は全期間固定の住宅ローンですが、不動産価格がここまで高くなっていると、自己資金をかなり出せる方以外は、全期間固定金利の住宅ローンは組めないでしょう。

必然的に、変動金利型の住宅ローンを選ばざるを得ません。

金利が上昇する限り、いずれ家計に大きな影響が出るでしょう。

まとめ

  • 修繕・設備交換の費用(見えにくい住居費)は、工事費の上昇で約1.4〜1.5倍に
  • 金利の上昇で、返済額は年10万円以上増えるケースが出てきている
  • 物件価格の上昇で変動金利を選ぶ人が多いが、金利上昇を前提にした借入額にしておく必要がある

前回の記事でお伝えした「手取りの25%以下」に加えて、金利が上がっても、修繕費を積み立てても無理のない額で借りることが、これからの住宅購入の安全な考え方です。

前回の記事:住宅ローン返済比率は「手取りの25%」が安全な理由

※「25%」は法律などで決められた基準ではなく、家計を守るための目安です。

「金利が上がっても、修繕費を積み立てても大丈夫?」と気になった方は、ライフプランをつくって確かめてみましょう。

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試算の前提

借入額3,500万円・35年・元利均等返済・ボーナス返済なしで試算。2016年の適用金利、10年固定終了後の優遇幅(1.4%)、戸建ての修繕費(2009年水準で年20万円)は例として置いた数字です。手取りは、前回の記事と同じく平均年収の会社員(40〜64歳・単身・兵庫県)で計算しています。

出典

  • 国土交通省「建設工事費デフレーター」(2015年度基準)
  • 国土交通省「不動産価格指数(住宅)」
  • 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年版・令和3年改訂版)
  • イー・ローン「住宅ローン関連の金利推移」
  • 住宅金融支援機構「フラット35 金利」「住宅ローン利用者の実態調査」(2026年1月調査)
  • 国税庁「民間給与実態統計調査」(令和7年分)

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