住宅ローン返済比率は「手取りの25%」が安全な理由
住宅ローンの借入額を考えるとき、「年収の25%までなら安全」という目安をよく見かけます。
ただ、ここでいう年収の多くは額面(税金や社会保険料を引く前の金額)です。
わたしは住宅ローンのご相談やライフプランの作成で、「手取りの25%以下」を安全なラインとしてお伝えしています。
理由はシンプルで、この十数年で、額面と手取りの差が広がっているからです。
この記事では、わたしがFPとして独立した2009年と2026年を比べ、その根拠を数字でご紹介します。
わたしがFPとして独立した2009年ごろ、住宅価格はリーマン・ショック後の不動産市場悪化の影響で、今と比べるとかなり割安でした。
相談者の皆様が借り入れる住宅ローンの額もそれに応じて少なくて済んだため、収入に占める住宅ローンの返済額の割合は低かったです。
勤め先が倒産したり、解雇されたりしない限りは返済に困ることはない、というご家庭ばかりだったと思います。
しかし現在は、不動産価格が大幅に上昇し、低かった住宅ローン金利も上昇傾向です。
物価上昇に賃金上昇が追いつかない、家計にとってかなり厳しい状況にあります。
これから先、住宅ローンを返済していけるかどうか、住宅ローンを借りる人たちの不安はとても大きなものとなっています。
平均年収は増えた。でも物価で割り戻すとほぼ横ばい
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、会社員の平均給与は次のとおりです。
| 2009年 | 2026年(※) | |
|---|---|---|
| 平均給与(額面) | 406万円 | 487万円 |
※2026年分の統計はまだ公表されていないため、最新の令和7年分(2026年9月公表)を使っています。
額面だけを見ると、約2割増えています。
ただし、2009年はリーマン・ショック直後で給与が大きく落ち込んだ年でもあります。
同じ期間に、物価(消費者物価指数)は約17%上がりました。
物価で割り戻すと、額面年収の伸びはわずか+2.4%。
実質的には、ほとんど増えていないのです。
社会保険料の負担は12.9%→15.6%に
一方で、給与から天引きされる社会保険料は、この間に大きく上がりました(会社員の本人負担分、兵庫県の協会けんぽ・40〜64歳の場合)。
| 項目(労使合計の料率) | 2009年 | 2026年 |
|---|---|---|
| 厚生年金 | 15.704% | 18.3% |
| 健康保険(兵庫県) | 8.20% | 10.12% |
| 介護保険(40〜64歳) | 1.19% | 1.62% |
| 子ども・子育て支援金 | なし | 0.23%(2026年4月分〜) |
| 雇用保険(本人) | 0.4% | 0.5% |
平均年収で計算すると、社会保険料は年約53万円→約76万円。
額面に占める割合は12.9%→15.6%になりました。
手取り率は80.2%→77.9%に下がった
所得税は、2026年の税制改正で基礎控除が大きく引き上げられたため、2009年よりむしろ少し軽くなっています。
それでも、社会保険料の増え方を埋めきれていません。
| 2009年 | 2026年 | |
|---|---|---|
| 額面年収 | 406万円 | 487万円 |
| 社会保険料 | 約53万円 | 約76万円 |
| 所得税+住民税 | 約28万円 | 約31万円 |
| 手取り年収 | 約326万円 | 約379万円 |
| 手取り率 | 80.2% | 77.9% |
さらに、手取りを物価で割り戻すと、2009年より▲0.6%。
額面が80万円以上増えても、実際に使えるお金は増えていない計算です。
なお、同じ年収で比べても、2026年の制度のほうが手取り率は1〜2ポイント低くなります(年収300万〜750万円で試算)。
「額面の25%」は手取りの何%にあたるのか
ここが本題です。
返済比率25%を、額面と手取りで比べてみます。
| 2009年 | 2026年 | |
|---|---|---|
| 額面の25%(年間返済額) | 101.5万円 | 121.8万円 |
| 手取りの25%(年間返済額) | 81.4万円 | 94.9万円 |
| 差額(年間) | 20.1万円 | 26.9万円 |
| 額面25%の返済は手取りの… | 31.2% | 32.1% |
「額面の25%」で借りると、手取りに対しては3割以上を返済に回すことになります。
しかも、その差は2009年より広がっています。
同じ「25%」という言葉でも、額面を基準にすると、家計の実際の負担は昔より重くなっているのです。
住宅ローンの返済は、ほかの支払いよりも優先しなければなりません。
ところが、収入に占める住宅ローンの返済が大きいと、お子さんの成長に合わせて増えていく教育費や、病気・事故などで一時的に収入が途絶えたときの医療費・生活費など、住宅ローンの返済よりも優先せざるを得ない支出が出てきたとき、住宅ローン破綻ということがあり得ます。
わたしのところにご相談にみえた方で多かったのは、お子さんの教育費が想像以上に高額で、お金に余裕がなく、住宅ローンの返済が厳しいというご相談でした。
家計の見直しをしようにも、削ることができる支出がほとんどない。
余裕がなさすぎるため、蓄えもできない。
そんな状況まで追い込まれていました。
原因は、住宅ローンの借り過ぎでした。
こういう状況になる方は、金利上昇とともに今後かなり増えていくと思います。
できるだけ早めに家計を厳しめに見直し、金利上昇による住宅ローン返済の負担増に備えなければなりません。
消費税まで考えると、さらに重くなる
消費税は2009年の5%から、今は10%(食料品などは8%)です。
手取りの7割を消費税のかかる買い物に使うと仮定すると、消費税の負担は年約11万円→約23万円。
消費税を除いた「実質的な手取り」で見ると、額面25%の返済は32.2%→34.1%にあたります。
※消費税の計算は仮定を置いた目安です。物価の上昇には消費税の増税分も含まれているため、物価の話と重ねて足し合わせることはしていません。
まとめ
- 額面年収は増えたが、物価で割り戻すとほぼ横ばい
- 社会保険料の負担率は12.9%→15.6%に上がり、手取り率は80.2%→77.9%に下がった
- 「額面の25%」の返済は、手取りの約32%、消費税まで考えると約34%にあたる
住宅ローンは30年、35年と続く長い約束です。
これからも社会保険料は簡単には下がらないと考えられます(子ども・子育て支援金も段階的に引き上げられる予定です)。
だからこそ、わたしは「手取りの25%以下」を安全な目安としておすすめしています。
※「25%」は法律などで決められた基準ではなく、家計を守るための目安です。教育費や老後資金の準備まで含めて考えることが大切です。
次の記事:家を持つ負担は、返済額だけではありません
手取りが目減りする一方で、家を持つための負担そのものも重くなっています。
修繕・設備交換の費用(見えにくい住居費)と、住宅ローン金利の上昇については、次の記事で詳しく解説しています。
「わが家の手取りなら、いくらまで借りても大丈夫?」と気になった方は、ライフプランをつくって確かめてみましょう。
住宅購入・住宅ローンのご相談は、ファイナンシャルプランナー菊池へ
試算の前提
40〜64歳・単身・会社員、兵庫県の協会けんぽ加入・神戸市在住として試算。社会保険料は各年の秋時点の料率で年収全体にかけて計算し、標準報酬月額の端数などは省略しています。2026年の年収は令和7年分の平均給与を使用。家族構成・お住まいの地域・加入している健康保険によって金額は変わります。
出典
- 国税庁「民間給与実態統計調査」(平成21年分・令和7年分)
- 全国健康保険協会「都道府県毎の保険料率」(平成21年度・令和8年度)
- 日本年金機構「厚生年金保険料額表」
- 厚生労働省「雇用保険料率」(平成21年度・令和8年度)
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」/国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
- 総務省統計局「消費者物価指数」